俺の詩


『お好み焼き屋』

俺が八つの時に店が出来て
十四の時に店じまい
十八の時に更地になって
十九の時に駐車場となった

俺の初恋の人がこのお好み焼き屋の娘で
彼女に会いたいために
習い事の帰りによく
この店でお好み焼きを食べてた

でもそこで彼女に会えたのは
覚えてる限り一度だけ

だから俺のこの店に関する思い出は
鉄板の向こうのお袋さんの顔と
「独眼竜政宗」の紺地の暖簾

今でも元気にしてっかな
おばちゃん


『駄菓子屋』

寺の親鸞さんの像に供えられた小銭をくすね

墓石を踏み台にして塀を乗り越え

裏路地を抜けていつもの駄菓子屋で買い食い

俺が十一の時の下校風景

そんな罰当たりな小僧が
こんなに大きくなりました

駄菓子屋のバアさん

大村崑のオロナミンCの看板
何処にやっちまったんだ?

コカコーラのは残ってるのに


『廃バス』

四十年近く前の古い型
スクラップになって船の係留場に転がってた

地元の漁師が物置に使ってて
狭苦しい淀んだ空気に
ドブ川の匂いと潮の香りが交じり合って
車内にはわけのわからない悪臭が漂ってた

ある日突然
このバスは何処かに消えてしまった

こんな所からこんな物を動かして
一体何をするつもりだったのか

未だにわからん


『煙草』

メンソールで口当たりさわやか

タール1mgで健康的

漢方薬入りで喉にやさしい

なんだそれ

そういうのを
「毒にも薬にもならない」と言うんだ

こういうものは不健康だからこそ面白い

でも俺

十九までは煙草を見るのも嫌だった


『母校の道場』

青春とは何かと聞かれても
俺は答えられない

俺の青春というやつが
もうとっくに終わってしまったのか
まだその最中なのか
それとも始まってすらいないのか

自分でもよくわからない

でも一つだけわかる事がある

もっと年をとって
「青春」がどんなものかはっきりわかった時

今はもうないこの道場の写真を眺めながら
俺はきっと

「俺の青春はここにあった」と言うだろう

血と汗と涙と

挫折と後悔と

そして友と

 


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