汚された思い出


多少ゲームをする人なら、アトラスというメーカーの事はご存知でしょうな。

90年代前半、ナムコから版権を買い取って始めた「女神転生」シリーズでヒットを飛ばし、
そこから分派したものも含めて、現在に至るまでシリーズ作品を作りつづけているあの会社です。

アーケードシューターにとっては、低迷していた業界に革命的な新風を吹き込んだ「怒首領蜂」を始めとして、
世に言う「弾幕型シューティング」を数多く世に送り出したメーカーとしても知られております。
(ついでに言うと「プリクラ」こと「プリント倶楽部」を作ったのもこのアトラス)

そのアトラス、実は格ゲーブーム真っ只中の93年に、ある格闘ゲームをリリースしておりまして。

その名も豪血寺一族

これはもう凄いゲームでした。

何が凄いって、主人公が還暦を十五年以上過ぎた老婆

しかも必殺技で入れ歯を飛ばすわ、
相手にタコみたいに吸い付いて精気を吸い取って一時的に若返るわと、やりたい放題

他にも、殴り合いよりも三度の飯が好きな(逆にあらず)坊主とか、
対人恐怖症のため人前で仮面を外すことの出来ない忍者とか、
他のゲームに出たら激しく浮いてしまうイロモノ道一直線のキャラが多いんですが、
妖怪ババアの前では全てが霞みます。

そんなこんなで局所的にヒットを飛ばした「豪血寺一族」、調子に乗って一年後に続編を出しました

それが豪血寺一族2であります。

これはもう色んな意味で弾けてました。そのイカレっぷりはまさしく空前絶後

 

まず新規参入したキャラが、

入れ歯飛ばし若返りババアの母親にあたる、やたら顔のデカい101歳のババア

ヨボヨボからマッチョに自在に変身する83歳のジジイ

死んだ飼い犬の霊を取り憑かせ、犬男に変身できる幼稚園児

某カードキャプターに妙に似ている魔法少女(声は当時セーラームンで大人気だった三石琴乃

といった具合。

 

しかし一度プレイしてみれば、このゲームの本当の凄さはそんな所にはないということがわかります。

なんとですね、歌が流れるんですよ。しかも全14ステージの内のおよそ半分に

無論このゲームは「豪血寺一族」の続編、歌の内容だって半端じゃありません。

例えば三石琴乃as魔法少女のステージでは、三石女史自らがBGMで歌ってるんですが、
その歌詞をちょっと見てもらいましょう。タイトルは「魔法みたいな恋したい」。

 

アナタは素敵な人だけど〜♪
お金がないならサヨナラね〜♪

 

真の芸術の前に言葉は無意味だということを思い知らされました。

格ゲー大好き中学生だった私はこのハジケっぷりに感動してしまい、
当時流行ってたヴァンパイアやKOF94などそっちのけでこのゲームをやってました。

今でも「お前の心のゲームを挙げろ」と言われたら、間違い無くこの作品を格ゲー部門にノミネートさせます。

 

で、ここからが本題。

 

豪血寺一族2がリリースされて間もなく、あのコンシューマハードの怪物、プレイステーションが発売されました。

プレステは本格的にCD-ROMを導入した初めての機種でした。

CD-ROMというのはご存知のように、それまでの主流だったROMカセットに比べて容量に雲泥の差があり、
その特性を生かしたゲームが多々開発されたというのは、もはや語るまでも無い事実。

例えばアーケード作品の移植の場合、それまでは良くも悪くもオリジナルとは別の作品になってしまっていたのが、
これにより文句のつけようのない完全移植が可能になったわけです。

豪血寺一族2も1995年、この波に乗る形でPSに移植されました。

しかし私は当時プレステを持っておらず、リリースされたのは知っていても手に入れることが出来ませんで。

その「豪血寺一族2 ちょっとだけ最強伝説」を、発売に遅れること7年、つい先日980円で購入しました。

もうね、近所のオモチャ屋に毎日のように通ってやりまくった思い出が、頭の中駆け巡りましたよ。

そしてプレステにセットして電源をつけていざプレイしてみると、その期待は無惨に打ち砕かれました

 

私の記憶にある限り、これと同時期に発売されたアーケード移植作品を挙げてみますと、
ストリートファイターZERO、鉄拳、極上パロディウス、雷電といったところ。

どれも見事な移植でしたよ。
読み込み時間の有無を除けば、アーケードと遜色ないどころか全く同じでした。

ところがこの「ちょっとだけ最強伝説」、プログラマが酒飲みながら作業してやがったのか、
反論の余地など微塵もない見事な劣化コピーとなっております。

しかもパッケージ裏の宣伝文句にはこんな事を書いてまして。

 

アーケードの完全移植だけじゃ飽き足りない!
そんな方へ、だから〜ちょっとだけ最強伝説〜

 

ほーう、完全移植ですか。

背景パターンを大幅に削ってても完全移植ですか。

試合前のデモがなくなってても完全移植ですか。

超必殺技のエフェクトが完全に別物になってても完全移植ですか。

実にいい仕事してますね。

そのくせ、キャラバランスに次ぐ問題だった必殺技コマンドの受付の悪さだけは、
文句つけようのないぐらい見事に移植しやがって。

ご褒美として地獄巡り永遠の旅にご招待しましょうか?

 

ここまで読んで、「そんな目くじら立てて怒ることはないだろう」と言う方も多いんじゃないですかね。

いや、言いたいことはわかりますよ。
移植=劣化コピーが当然だった時代を知ってる人間にとっちゃ、こんなのは大した事ないって思うでしょうさ。

私だってね、そんなモノで怒りゃしませんよ。
この程度ならまだまだ、中坊の頃の思い出を汚されたなどと思いやしません。

つまりですよ、それどころじゃない、もう致命的な欠陥があるわけですよこのゲームには。

それは至る所で言われてる「キャラが変身する度に試合を中断してロード」とか、そんなヌルいモノじゃありません。

 

 

試合中に処理落ち起こすってどーいうことよ?

 

 

シューティングならね、スローモーションになって判断する時間が増えるからそれでいいでしょうさ。

でもな、刻々と変化する状況に応じてコマンドを入力しなきゃならん格ゲーで、
突発的に動きとキー入力が鈍くなってしまったら、もはやゲームになどならんのだよ。

 

もうね、この作品で楽しみたいなら、プレステ本体など一切使ってはいけません。

思う存分投げ飛ばしてCDフリスビーとして遊びましょう。

そう、鉄の左腕の折れるまで、熱い血潮の燃え尽きるまで。

 

まー、プレイした時点でもう真っ白に燃え尽きるかもしれませんけどね・・・

 


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