2008年05月05日(月)


 『勁』とは、中国武術における根本的・根源的な力を指す概念であり、またその力の蓄えないし発揮のことを指す。
 中国武術の特定の流派においては、その勁を養うため、『馬歩站椿』と呼ばれる基礎練習を行う。

(1)背筋を伸ばす。
(2)軽く握った両拳を胸の前に軽く突き出す。
(3)両足を平行にし、肩幅よりやや広く開く。
(4)膝を曲げてなるべく深く腰を落とす。
(5)重心を出来るだけ後方に寄せる。
(6)そのままの姿勢を保つ。

 簡単に述べてしまえば、馬歩站椿の内容はたったこれだけである。特別な器具も広いスペースも必要としない、実に単純極まるものだ。
 しかし、この原始的にすら見えるシンプルな稽古法の中に、中国武術の真髄が確かに隠されている。



 背筋を伸ばし、仙骨から後頭部に至るまでの背骨のラインを、感覚的に見て地面から垂直に保つ。これを『立身中正』という。
 立身中正は、四肢の動きを互いに連動させるのに最も適した、骨に最も負担がかからない姿勢である。
 馬歩站椿の第一の目的は、まずこの立身中正を体に覚えさせることである。
 しかし、これを何時如何なる時も保つには、並ならぬ体力を要する。
 立身中正は、確かに骨に負担がかからない。しかしそれは本来骨と筋肉とに分散されていた力を、全身の筋肉、取り分け両足が大きく引き受けるということなのである。
 骨にかかっていた分の負担が、何処ともなく消えてしまうということでは、決してない。

 馬歩站椿の第二の目的は、立身中正を常に保ち続けられるだけの、強靭な足腰を作り上げることである。
 馬歩站椿は、筋力トレーニングという観点から見た場合、非常に総合的かつ合理的な鍛錬法である。
 中腰の姿勢を保てば大腿部・下腿部が、足を広げて踏ん張れば内腿が、重心を後ろに寄せれば足指が地面を掴んで足裏と脛がと、下半身の各部がそれぞれ同時に鍛え上げられる。
 それだけではない。背筋を伸ばせば腰と腹に、顔を真っ直ぐ前に向ければ首に、脇を締めて手を突き出せば胸と上腕に、拳を握れば前腕にと、正しく行えば脚以外の部分にも負荷をかけられるようになっている。
 それを何日、何週間、何ヶ月、何年と続けることで、真っ直ぐに伸ばした胴体を支える確かな体力が養われる。
 そしてその体力が、立身中正の下で効率よく運用されることにより、勁として様々な場面で発揮されるのであろう。

 馬歩站椿というものは、言うなれば、エンジンを作る作業に似ている。
 立身中正の姿勢を整えることは、力の伝達経路を作ること。即ち、シャフトを通して歯車を噛み合わせることである。
 足腰の鍛錬は、気筒の改善と本体の組み上げに当たる。馬力を向上させ、またその馬力を支えることができるだけの土台を作り上げるのだ。
 そしてこの二要素の他にもう一つ、地味ながらも非常に重要で欠かすことのできない要素がある。
 それは、呼吸である。
 呼吸はエンジンに例えるなら、燃料を気化し気筒へと送るキャブレーターの役割を果たす。酸素を取り込んでエネルギーと混合させ、より効率のよい燃焼の手助けをするのである。

 人間が行う呼吸の方法は、大きく三種類に分けられる。
 一つは、胸郭を膨らませて空気を呼び込む胸式呼吸。
 一つは、上腹を膨らませて空気を取り込む腹式呼吸。
 一つは、下腹を膨らませて空気を吸い込む丹田呼吸。
 上のものほど、呼吸の際に使うエネルギーは少ない。しかし、空気を取り込む量もまた同様に少ない。
 物質が炎をあげて燃え盛るためには、十分な酸素が要る。それは、身体の運用においても同様のことである。

 臍下丹田は、ヘソから見て5cmほど真下、背骨の下端である仙骨の高さにある。
 上腹部、鳩尾に近いあたりを膨らませても、丹田は膨らまない。しかし下腹部、丹田を膨らませれば、上腹部も自然と膨らむ。
 つまり丹田呼吸を用いれば、腹式呼吸に比べ、それだけ多くの酸素を胴に取り込むことができるということである。
 また丹田呼吸は、仙骨を支えとして行われるものである。
 故に、立身中正が身に着けば、その分丹田呼吸もまた力を増してゆく。そして丹田呼吸の力が増せば、立身中正もより確かなものとなる。
 即ち呼吸には、エネルギーを燃焼させるだけではなく、より効率よくエネルギーを燃焼させるための環境を作り上げる効果もあるのである。



 実際に套路を学んだことも組手をしたこともない素人が、たかが馬歩站椿ひとつを独学で実践しただけで、これだけのことを理解できた。
 中国武術というのは、途轍もなく奥が深い。本当に、途轍もなく。


2008年05月07日(水)


  • 重心は、必ず後ろに寄せなければならない。前に寄せると、爪先に体重がかかる。爪先に体重がかかると、足骨・関節に負担がかかってしまう。つまり、筋肉にかかる負荷がなくなってしまい、鍛錬にならない。

  • 上体は、必ず立身中正を保つこと。前に傾けると上に述べたような状態になり、筋肉に負担がかからない。後ろに傾けると腰が前に出て、相対的に膝が伸びた状態になり、脚全体にかかる負担が減ってしまう。

  • 足の幅は、広げすぎないように。広げすぎると内腿を踏ん張った際、膝を痛める危険がある。かと言って、狭くもしすぎないように。余程訓練積んだら別かもしれないが、少なくとも初心者は、踏ん張りが利かずに必ず転ぶ。

  • 呼吸は、鼻から吸って口から吐く。口から吸うと空気が一度に入ってリズムが狂う。鼻から吐くと呼気が丹田から出ず、力が充分行き渡らない。

  • 立身中正とは、丹田呼吸が十全に出来る姿勢と言い換えてもいい。

  • 普通の筋力トレーニングなら、無意識でも体を動かし続けていればそれでいい。しかしこれは総合的な鍛錬であるため、一箇所でも不完全な部分が出来ると、連鎖的に全体のバランスが崩れてしまう。故に、常に全身に意識を巡らせ続けること。

     馬歩站椿に関する、個人的メモ。



     どんな困難なことに見えようとも、俺に出来るなら、それは他の人間にもできる。
     ただ、お前らじゃ無理だ。


  • 2008年05月08日(木)


     俺はこんなに不安なんだ検査の日程を前倒しろと、病院で医者の話も聞かずわめき散らしていた、金玉いじり過ぎたせいで袋に雑菌が入って調子悪くなった引き篭もりの知り合いが、他にも検査を待っている患者がいるので贔屓はできないときっぱりと断られた挙句、「もし検査結果に納得いかなければ、次は精神科での受診をお勧めします」と言われて帰ってきました。
     そろそろ三十路に手が届こうかという、いい歳したおっちゃんです。というか、幼馴染です。
     こいつの人生って何だと、真剣に考えました。そしてうんざりしたので、考えるだけで止めることにしました。

     とりあえず、死ね。



    2008年05月21日(水)


     脛を左右に傾ければ踏ん張りは利くが、膝に負担がかかる。故に、膝から下は常に垂直に保つこと。
     そのかわり足の裏を利かせる。踵を軸にし、親指でしっかりと地面を噛む。
     そうすれば、脛を立てても体勢を保てる上、足首から先も鍛えられて言うことなし。

     飽きずに馬歩站椿やってます。でも、柔術始めようかとも思ってます。古流じゃなくてブラジリアンの方。


     

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