What is "Ultimate Deffence"?


「10cmの爆弾」と同じく、この作品において重要なカギを握る技、それが『鋼鉄の肉体』
B・Bが爆弾を編み出したことを知った森山仁が、特訓の末に身につけた究極の防御法である。

森山は10cmの爆弾の正体を、超破壊力を持つショートパンチだと見破った。
例えば、10メートル離れた場所から思いっきりボールを投げられたとしても、かわすのは容易だろう。
しかしたった10センチの距離から、時速200キロ以上の猛スピードで投げられた場合・・・
どんな天才的な防御テクニックを持った人間でも、回避することはできない。
これがB・Bの出した、森山に対する最も単純で最も難しい回答なのである。
それならば、よけなければいい。
爆発的なパンチ力をもってしても破壊できない、鋼鉄の肉体を手に入れればいい。
そう答えを出した森山は、足柄山巌林寺へ出向き、僧兵拳法の総帥・大道法仁に教えを乞うた。

「『気』じゃよ…答えは、己の肉体に…己自身に聞いてみることじゃて。」
(ACT.45「鋼鉄の肉体」より)

自分の肉体を鋼鉄にしろと詰め寄る森山に、大道師範はそう返した。
そして三台のバッティングマシーンを相手に自分の体を苛め抜いた末に、森山は『気』の正体をこう語った。



森山仁、血を吐きながら極意を語る
(ACT.48「関東高校ボクシング大会」より)


わかりやすく説明すると、攻撃の当たった瞬間、その攻撃と同じスピードで素早く身を引くことにより、
その衝撃を極限まで消し去る。
それと同時に、体の全筋肉を緊張させて全身を一枚のバネと化し、その攻撃のエネルギーを、
ヒットする部分だけでなく全身を使って受け止めるのだ。
これにより、攻撃を仕掛けた相手はエネルギーを吸い取られたように感じ、
見ている者にはまるで肉体が鋼鉄でできているかのように見えるのだ。
そしてその身を引くべき一瞬を見極める集中力、それが『気』なのである。
この究極の防御法さえあれば、どんな威力を持つKOパンチ、たとえ10cmの爆弾であろうとも、
ダメージを完全に消し去ることができるのだ。


防御法であるというその性質もあるだろうが、この技には10cmの爆弾と違い、
構造的な弱点と言えるものは存在しない。
完全に発動した場合、どのような方法をもってしてもこの技を破ることは出来ない。
ただしそれは、あくまで「発動した場合」である。
先程も述べたように、『鋼鉄の肉体』を用いるには、研ぎ澄まされた集中力を必要とする。
もしもそれらの集中力が乱されてしまった場合、身を引くべき一瞬を察知できなくなり――
『気』を読み取れなくなり、攻撃を防御できなくなってしまうのだ。
例えば森山の場合、早瀬大が危篤になっている中で臨んだ緒方豪との日本タイトルマッチ、
病院へ急ごうと試合展開を焦るあまりに集中力が散漫になり、的確な攻撃が出せず、
そして鋼鉄の肉体を発動されるのに必要な『気』を読み取ることも出来ず、
一試合に四度のダウンを喫してKO負けとなった。



集中力が乱れるとこうなる
(ACT.129「SO BAD」より)


10cmの爆弾は、凄まじい破壊力を持つ文字通りの必殺技である。
それ故に、時と場合を考えて用いなければならず、決して怒りに任せて使ってはならない。
鋼鉄の肉体には、それとは違った意味での精神力を要する。
何があろうとも動じない精神力――平常心と言ってもいいものが必要になるのだ。
そういう点では、あるいは爆弾より難しい技と言えるかもしれない。




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