「横須賀」編・解説
高樹令羽。
横須賀のドブ板界隈で「B・B」と呼ばれ、その血に一度火がつくと、誰も想像のつかないことを
やってのけてしまう男。
バスケやトランペット等に多彩な才能を持ってはいるものの、いや、多彩な才能を持っているが故に、
自分を本当に奮い立たせるものが見つからず、茶色の小瓶が波間を漂うような毎日を送っていた。
そんなある日、将来「天敵」となる男、森山仁にケンカで徹底的にぶちのめされ、
ボクシングを志すことを決意する。
ストーリーそのものは、ありがちなボクシング漫画の粗筋とそれほど変わらない。
古今東西のボクシング漫画をひっくり返してみれば、似たようなストーリーを見ることもあるだろう。
しかし作品の雰囲気は、それらとは明らかに異なる。
その最たる要因は、キャラクターの性格であろう。
大抵このようなストーリーの主人公は、有り余る力を持て余し、その発散の場を求めて
ギラギラしているというのが常だったが、B・Bにそんな感じは見受けられない。
何か自分を突き動かすものを待ち望みながら、あてどなくさまよっているという感じはするものの、
基本的に軽く明るいキャラクターなのである。
台詞回しも独特で、ポップな雰囲気が随所に漂っている。
このあたりが、「巨人の星」などに見られる古典的スポ根漫画と一線を画している。
しかし、決して的は外さない。
時には明るく、しかしある時には激しく。
今でこそこういうタイプの作品は珍しくないかもしれないが、B・Bが1985年発表であることを考えると、
ある意味この作品は時代の先端を走っていたのかもしれない。
ただしこの時点では、まだ「名作」と認められるほどの作品ではない。
読めば確かに燃えるものではあるが、「名作」の領域に達するには、まだ足りないものがあるのだ。
それが何であるかは、おいおい語ってゆくとしよう。