What is "10cm-BOMB"?


「10cmの爆弾」とは?
この作品の軸となる技の名前である。
その正体は、想像を絶する破壊力を持った、超ショートレンジから繰り出されるパンチ。
「10cmの距離さえあれば、爆弾のような破壊力を繰り出せる」という意味で、この名前がつけられたようだ。

森山の練習試合をたまたま目撃したB・Bとオットセイは、その森山の強さに愕然とした。
オットセイは「階級を落とせ」と勧めるが、B・Bは「俺はライト級以外でやる気はない」とつっぱねる。
しかし打開策があったわけではなかった。
いかに欠点をなくし、技術を向上させていこうと、このままでは絶対に森山と互角以上にはなれない。
どうしたらいいのかと模索していた時、父・源太郎は息子に自分の体験談――
自分より数段強いと言われていた相手とのケンカになった時に、自分の持ち味であるハンドスピードを生かし、
互角の好勝負を演じた時の事――を語り、続けてこう言った。



オヤジの金言
(ACT.33「ティム・ショール」より)


その言葉を糸口に、自分の中で森山に勝るものを考えてみた結果、出た答えは「パンチ力」であった。
しかし、ただのパンチでは森山には通用しない。
常人離れしたパンチ力をフルに活用した、常識を超える型破りなパンチが必要となる。
そしてオットセイとB・Bは、孤島での合宿に入った。
「爆弾」を身につけるための特訓方法は、青い実のついた栗の木にロープをくくりつけ、その木に背を向け、
ロープを握ってパンチを繰り出し、その衝撃で栗の実を全て落とすというもの。
肩、腰をフルに使って、全身のエネルギーを瞬間的に一撃のパンチに込めることができれば、
栗の実を全部落とすどころか、ついている葉すらも散らせることができる。
実際、爆弾を完成させた時は栗の木の葉と実を全て落とし、後にアメリカでも一撃で木を丸裸にした。


ただ、この技にも欠点がなかったわけではない。
通常のパンチが、腕の伸びきった瞬間に一番破壊力があるのと同様に、
「爆弾」も10cmという距離が最も威力を発揮する距離なのである。
それより距離を縮められても伸ばされても、十分に威力を発揮しない。
闇ボクシングでシェイドは、爆弾に向かって踏みこみ、あるいは飛び退いて爆弾との距離を調整した。
そしてB・B自身が世界戦において、武道館中野の爆弾を見切り、発動直前に拳を当てて止めた。
ただし、超破壊力を持つ爆弾に対してこれを実行するのは容易なことではない。
成功例もこの二例だけである。
これを考えると、確かに10cmの爆弾は欠点のない技と見なしても問題はないかもしれない。



魔術師による種明かし
(ACT.247「窮鼠」より)


しかし一方でその有り余る破壊力は、多くの悲劇を生む原因となってしまった。
関東大会の控え室において、森山を陥れた木地本の顔面に本気の爆弾を素手で叩きこみ、
結果木地本は即死、高樹令羽は名前を捨てて逃亡する羽目になった。
傭兵部隊「スリーピングシープ」の時には、爆弾で何人もの敵兵士を葬り、
そのことを自己嫌悪したB・B自身が精神分裂症を起こしてしまった。
また武道館中野との世界戦においても、試合後に中野を拳銃で狙撃したカルロス・ドミンゴに対して
素手で爆弾を放ち、彼もまた即死。
そしてその結果、これ以後の公式戦では爆弾の使用を禁じられてしまったのである。



被害者・K少年
(ACT.64「殺人者」より)

被害者・D氏
(ACT.251「悪魔誕生」より)


『10cmの爆弾』とは、文字通りの必殺技である。
本気で放てば、間違いなく人を殺めることができる。
そのあまりにも凄まじい破壊力故に、一歩間違えば自分自身を深く傷つけかねない、諸刃の剣。
何事も突き詰めてゆくと、犠牲が必要不可欠になってしまうということだろうか。




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